変拍子や転調による自由自在な楽曲で、唯一無二の世界観を持つスリーピースバンド『People In The Box』。昨年の11月には新木場STUDIO COASTで全国ツアーのファイナル公演を行い、磨きのかかったアンサンブルを見せつけた。
その公演が収められた4作目の映像作品、「Cut Four」が2月24日にリリースされた。約8ヶ月にも及ぶ全国ツアーを経験した彼らが、スリーピースの限界を超えた表現に挑む様子がトレーラーからも伝わってくる。
「Cut Four」トレーラー映像
People In The Boxは時に彼らなりのユーモアが垣間見える独特な活動から、ファンを獲得し続けている。何故、彼らからファンは目が離せないのか。
それは、楽曲の持つ圧倒的な世界観、それを表現しようと挑むMV、バラエティーに富んだ内容のライブがファンの心を掴んで離さないからだ。これまでの活動に注目しながら、その理由について迫っていきたい。
「東京喰種 トーキョーグール」原作者、石田スイをも魅了した圧倒的な世界観。
People In The Boxは福岡県で結成された後、2007年に残響Recordより1stミニアルバム「Rabbit Hole」をリリース。
ボーカル、波多野裕文(はたのひろふみ)の甘い歌声やリスナーの想像を膨らませる暗喩に富んだ歌詞、予測不能な楽曲の構成が評判を呼び、2009年2月に行われた東京・SHIBUYA CLUB QUATTROでのワンマンライブをソールドアウトさせた。
同年10月には3rdミニアルバム「Ghost Apple」でメジャーデビュー。曜日の名前を持つ7つの収録曲が紡ぎ出す物語は、ごくごくありふれた日常ではない。どろりとした、混沌の雰囲気を持ちながらも儚くて美しい世界を描き出している。
わたしのいのちを、君にあげる
パンケーキみたいに切り分けて、あげる
「日曜日 / 浴室」
People In The Boxの全楽曲において作詞を行う波多野裕文は以前、「歌詞の意味について解説はしない」と発言している。
歌詞の解釈をこちらに委ね、聴き手に想像させる姿勢は楽曲の受け取られ方を大きく広げていると言っても過言ではない。だからこそ、彼らの楽曲は1つの解釈にとどまらない圧倒的な世界観を持っているのだ。
人気漫画「東京喰種 トーキョーグール」の原作者である石田スイもその圧倒的な世界観に惹かれ、アニメのエンディングテーマを彼らに依頼している。バンド史上初のタイアップシングルとしてリリースされたこの「聖者たち」は、期間生産限定盤のジャケットを石田スイが描き下ろしている。
聖者たち / People In The Box
まだ空っぽな明日は
限りなく黒に近いグレイ
なにかにもなれずに
限りなく黒に近いグレイ
「聖者たち」
タイアップのために書き下ろした楽曲ではあるが、登場人物の心理やストーリーを踏まえることで説明過多を避けたと話している。彼らはアニメそのものに対して更に奥行きの出る楽曲を目指した結果、「聖者たち」は物語を終えた後の余韻を更に広げることとなった。
作品の持つ不穏な雰囲気を相乗効果によって更に広げた楽曲は、それまでPeople In The Boxを知らなかったアニメのファンの間でも大きな話題を集めた。
映像で観る、People In The Boxの幻想的な雰囲気
旧市街 / People In The BOX
2010年にリリースされた2rdアルバム「Family Record」のリードトラック、「旧市街」のミュージックビデオはアニメーション作家、加藤隆(かとうりゅう)によって制作された。People In The Boxの他、Mr.Childrenのツアー映像の制作なども担当している。
加藤隆の作品は、1枚1枚の絵を自らの手で描くことで生まれる、デジタルの技術には無い豊かな色彩の表現やふんわりとした質感が特徴だ。加藤隆はこの「旧市街」以外にも複数のミュージックビデオの他、一部のイベントにおいてライブ時に流れる映像をも制作している。
ニムロッド / People In The Box
本のページを捲る度にアニメーションが展開していくアイデアは、加藤隆がかねてよりやってみたいと思っていたそうだ。どんな物語が飛び出してくるのかという期待だけでなく、自然と人工物の対比が強く印象に残る作品だ。
気球 / People In The Box
どのミュージックビデオにおいても、登場するキャラクターの顔がはっきりと描かれていない。だからこそ、どんな表情をしているのか、どのような気持ちなのかを観ている側は想像を掻き立てられるのだ。
「旧市街」のミュージックビデオは「SPACE SHOWER TV MUSIC VIDEO AWARDS」においてノミネート、「気球」のミュージックビデオは「SPACE SHOWER MUSIC VIDEO AWARDS 2013」において優秀作品50の中に選出されている。
挑戦を続けるPeople In The Box
People In The Boxは、作品、ライブにおいて新しい試みを続けてきたバンドでもある。
2013年にリリースされた4thアルバム「Weather Report」は、1トラックに21曲が収められており、70分もの時間をかけて旅を描いている。「気球」という楽曲から始まり、道中で戦争を知り、真夜中を超えて最終的に辿り着くのは「開拓地」だ。
これは、はじまりかも
ただただ気配がしている
「気球」
君が乗る戦闘機のなか
花 敷き詰めて 贈るよ
はじめから抜け殻だったら
もっと世界が好きになれたかな
「脱皮後」
ようこそ
ごきげんいかが 孤独な旅人
「開拓地」
1トラックに21曲が収められている点は、物珍しく見えるかもしれない。
あるいは曲単位でダウンロードできることが当たり前になった現状に対するアンチテーゼにも思えるが、ただ奇をてらったものではないことは確かだ。何故ならば、音楽そのものを求めた旅をひと続きの物語として描くことにこそ意味があるからだ。
出典:j-wave
People In The Boxは昨年1月に行われたツアーファイナルにおいて、未完成の楽曲の披露、翌日に裏ファイナル公演を行う発表で会場をどよめかせた。このような、誰も想像できない活動や表現方法は、常にファンを驚かせている。
彼らの自主イベント「空から降ってくる」は、そのバラエティーに富んだライブの内容で観客を楽しませてきた。2010年の「空から降ってくる vol.2」は日比谷野外音楽堂での公演を、2011年から2013年にかけての3年間は劇場での公演「劇場編」を行った。
ストックホルム / People In The Box
「劇場編」はアコースティック編成の1部とライブ編成の2部構成となっており、2013年の「空から降ってくる vol.5~劇場編」ではチェロ奏者の徳澤青弦を迎えて行われた。威風堂々たるオーケストラ風のアレンジにより、楽曲の新たな可能性を発見できた公演は大きな評判を読んだ。
先日、これまで所属していた残響Recordから独立したことを発表したPeople In The Box。今後控えているライブでも3カ月連続で各メンバーが公演をプロデュース、ファイナル公演ではファンからのリクエストを元にセットリストが組まれることが発表されている。
「何十年とバンドを続けていく」と、波多野はかつてライブのMCでそう語った。その言葉が示す通り、彼らは自分たちの信じる音楽に対して、スリーピースの枠にとどまらない、自由な活動を続けていくだろう。
Live Schedule
2016.03.06(sun) 渋谷CLUB QUATTRO
「CLUB QUATTRO MONTHLY LIVE 福井健太(Ba) Produce 『ニューイヤーコンサート』」
2016.04.08(fri) 渋谷CLUB QUATTRO
「CLUB QUATTRO MONTHLY LIVE 山口大吾(Dr) Produce 『みんなダイゴマンになるダイゴマンナイト』」
2016.05.13(fri) 渋谷CLUB QUATTRO
「CLUB QUATTRO MONTHLY LIVE 波多野裕文(Gt/Vo) Produce 『Renaissance』」
2016.06.17(fri) 渋谷CLUB QUATTRO
「CLUB QUATTRO MONTHLY LIVE Request day 『People In The Jukebox』」
チケット一般発売日:2016/2/6(sat)
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2016.03.30(wed) TSUTAYA O-nest
nest20周年記念公演 「イノウ×ピープル」
【出演】
People In The Box / group_inou
チケット一般発売日:2016/2/13(sat)
関連リンク
People In The Box Official Site:http://www.peopleinthebox.com
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