青色申告決算書の書き方。一般用、農業用のエクセル・様式の資料

確定申告をするなら青色申告がおすすめですが、規模がそれほど大きくはない個人事業主にとっては負担になることも少なくありません。そこでこちらでは、一般・農業所得用の青色申告決算書を作成するときによく迷うところや決算書の作成に役立つ資料、確定申告に便利なソフトなどをご紹介していきます。

青色申告決算書とは

青色申告決算書とは、確定申告で青色申告を行う際に提出しなければならない書類の一つです。所得の明細を記載した決算書で、収入金額と必要経費の合計しか確認できない確定申告書の内容を保管するために用いられます。

確定申告をするときは青色申告か白色申告のどちらかになりますが、青色申告にすれば最高65万円の控除を受けることができます。ただし、事前に届け出が必要な上、帳簿の管理もしなければなりません。

青色申告決算書は4ページで構成されており、1~3ページ目は損益計算書と各項目の内訳、4ページ目は貸借対照表となっています。

65万円の控除を受けるためには複式簿記を選ばなければなりませんが、参考になる書き方や手引きもありますし、国税庁のデータやエクセルソフトなどを活用すれば負担も軽減されるでしょう。

一般用の書き方・手引き

青色申告決算書には一般用、農業所得用、不動産所得用という3種類の様式があります。複数の事業がある場合には所得ごとに決算書を作成しなければなりませんが、ほとんどの場合一般用を提出すれば事足ります。

一般用の書き方や手引きは最も需要が高いことから、様々な書籍やサイトから入手可能です。税務署で書式をもらうときにも詳しい手引きがついてきますので、参考にするとよいでしょう。

手引きには項目ごとに書き方の説明がなされていますので、記入が必要な部分を調べやすいです。1ページ目は決算書の内容をそのまま転記すればよいですが、2~3ページは科目ごとに書き方が異なるので目を通しておきましょう。

以下にほとんどの個人事業で必要な項目について見ていきます。

地代家賃

地代家賃は個人事業主が店舗や倉庫などの事業用賃貸物件を借りている場合や自宅を事務所として利用している場合などに記入する欄です。複数の物件を借りている場合には物件ごとに記入します。

支払先の住所・氏名は貸主である法人もしくは個人の住所氏名を記入します賃借物件の欄には店舗、倉庫、自宅兼事務所など分かりやすい表記にしましょう。

本年中の賃借料・権利金等の「権」は権利金、「更」は更新料を支払っていれば○で囲んで年間の支払総額を記入します。「賃」は賃料で、いずれも実際に支払った総額を記入しておきます。

左の賃借料のうち必要経費算入額は支払った家賃総額の内、経費に算入できる金額です。自宅兼事務所のように部分的に事業用に利用している時には、専有面積に応じて按分した地代を記入します。

会社からの給与の仕訳

個人事業主の収入は、業態に応じて様々です。商品を販売している場合には売上で統一することができますが、技術やサービスを提供して会社から給与として支払われた場合、青色申告ではどのような仕分けにすればよいのでしょうか。

個人事業主が会社から給与として支払いを受けた場合、それは事業所得ではなく給与所得になります。確定申告書でも事業所得とは別に給与所得の欄がありますので、源泉徴収票を見て転記しましょう。

事業用の預金口座に給与が振り込まれた場合には、預金額を増やしても事業所得の収支に影響を与えないように、借方科目に「預金」、貸方科目に「事業主借」と仕訳します。

なお、報酬等の支払調書が発行された場合には、仕分けは同じですが給与所得ではなく雑所得扱いになります。

貸借対照表

貸借対照表は、借方に現金や預貯金、固定資産などの資産、貸方に未払金や借入金などの負債、敷金や事業主借などの資本を入力します。それぞれに期首と期末時点の金額を入れると、借方・貸方の金額が同じになる仕組みです。

青色申告決算書の貸借対照表には様々な科目があらかじめ書かれていますが、関係ない科目は記入する必要がありません。また、事業で固有の科目を設定している場合には、空欄に適宜設定した科目名と金額を書くことも可能です。

貸借対照表を記載するには複式簿記で記帳しなければなりませんが、適正な帳簿の保管をしてこの表を埋めることで、最高65万円の控除を受けられるようになります。振替伝票を使って記帳すれば貸借対照表の集計自体はそれほど手間がかかりません。

国税庁の資料・データ・エクセル

確定申告の負担を軽減するために、国税庁では多くのサポートを行っています。例えば、郵送で確定申告書等を配布する事業所に対しては、毎年その年度における変更等も記載した申告書や決算書作成の手引きが同封されています。

また、オンラインで確定申告をしている事業所に対しては、e-taxのページで変更点の案内をしているほか、直接入力をすると申告書や決算書を自動計算で作成してくれるシステムがあります。入力で迷うことがあると、項目ごとに詳しい説明が参照できるようになっていますので、初めて申告をする人でも安心です。

手作業で申告書や決算書を作成する負担を軽くしたいなら、エクセルのソフトが便利です。有料のものも無料のものもありますが、いずれも必要事項を入力すれば各様式に転記されるようになっています。

青色申告決算書をエクセルで行う場合

青色申告決算書の記入を簡略化するために、エクセルのソフトを使う人も多いです。決算書の書式や記入方法自体はそれほど変化がありませんので、入手しておくと後々も役立つでしょう。

エクセルのソフトではマクロを使った計算やデータの集計・転記などができるため、最低限の入力で青色申告決算書を作成できます。ただ、元々会計ソフト用に開発されたものではないので、日常簿記に連動させたり毎年の変更点にすぐに対応させたりできるものはほとんどありません。

一方で、ファイルのコピーや管理が簡単にできるため、毎年ほぼ同じ内容で決算書を作成するときなどは、数字を入れ替えるだけで済みます。会計ソフトと違い、エクセルがインストールされていればどのパソコンでも使える点も利便性が高いです。

無料の資料

青色申告決算書のエクセルデータは、すでにできているものを無料でインストールすることも可能です。フリーソフトで検索するといくつも見つかりますので、使い勝手の良いものを選びましょう。

無料のソフトの場合、機能面はそれほど豊富ではないものの、内訳の欄に記入した内容を集計して損益計算書等に転記するものや、あらかじめいくつかの項目を選択しておくことで適切な控除等を自動で入力してくれるものはあります。有料ソフトも試用できるものが多いため、使いやすいものを探してみましょう。

エクセルを使うときは、入手したファイルが自分のパソコンのOSやエクセルのバージョンに対応しているものかどうかを確認しておきましょう。また、ファイルによっては別途エクセルにアドインやマクロを追加しなければ使えないものもあります。

青色申告決算書(農業所得用)

青色申告決算書の様式のうち、一般用や不動産所得用は副業をしている人でも比較的利用しています。一方、農業所得用は農業を営んでいる人が作成するため、他の様式に比べて利用者数は少ないです。

農業所得の場合、収入は作物の種類ごとに作付面積や収穫量棚卸残高などが必要ですし、支出では育成費用などを計算しなければならず、記入方法が他の様式に比べて特殊です。実際に得た収入だけでなく家事消費及び第三者に贈与した米や野菜も収入の扱いになりますので、記帳するときには注意しましょう。

このように農業所得に関しては特殊な点が多く、会計ソフトにおいても農業用は一般や不動産用とは別になっていることが多いため、複数の事業をしている場合にはソフト選びが重要になります。

書き方・様式

農業用の青色申告決算書を作成するときは、まず税務署で農業所得用の様式や書き方の手引きをもらってきましょう。このとき、農業所得以外の所得があれば、手掛けている事業ごとに決算書の様式が必要になります。

確定申告で注意しておきたいのは、一般的な帳票類に加えて農産物受払帳が必要になるということです。農産物受払帳は毎日の収穫や販売などを詳しく記帳する帳簿で、受入の欄に生産量等を、払出欄に販売や事業用、家事消費等を記載します。

青色申告決算書2ページ目の収入金額の内訳欄は、作物や畜産物ごとに作付面積や収穫量、販売金額や家事消費金額などを書く場所です。

また、繁忙期にバイトで人を雇うときには、作業の内容ごとにどのような作業で人を雇ったのかや、日数や支払金額(現金・現物)を書きます。

エクセルの参考事例

農業所得では年度によって販売単価が異なったり、作物の種類や収穫高に大きな違いがあったりするため、エクセルの青色申告決算書も手作業で入力するところが多いです。

単純に入力した内容を様式に転記して簡単な自動計算を行うようなソフトならば、無料でもいくつかみつかります。

有料ソフトでも農産物受払帳のような特殊な帳簿の作成や連動が可能なものはエクセルではなかなかありませんが、減価償却費の計算書などは合わせて作成可能です。

なお、有料のエクセルファイルならば、異なる種類の事業の青色申告決算書も作成できるようになっているものがあります。複数の事業をしている個人事業主ならば負担が大幅に減少するでしょう。

株式の取り扱いについて

農業を行っている個人事業主が株の売買などで収入を得ている場合には、農業の収入とは別の所得として確定申告をする必要があります。

従って、例えば農業用の資金を使って株を購入した場合には、資金を出すときに事業主貸として伝票に入力しなければなりません。

仮に株で利益が出たときには、事業主借として計上すれば売上の変動なしに事業用の資金を増やすことが可能です。そのため、青色申告決算書には株の売買に関する記入は一切必要ありません。

ただし、確定申告は必要です。資金の出どころが何であれ、株式の譲渡利益は通常分離課税で譲渡所得として申告しますが、人によっては事業所得扱いになることもあります。

青色申告決算書の現金主義用とは

青色申告決算書の様式は3種類ですが、それとは別に現金主義用というものも存在します。青色申告、白色申告共に基本的には収支の事実が確定した時点で記帳する発生主義を原則としています。

一方、現金主義というのは実際に現金の出し入れがあったときに記帳するもので、青色申告であること、前々年の合計所得が300万円以下の小規模事業者であること、事前に税務署に届出をしていることが条件です。

例えば、売掛金が発生して後日支払いを受けた場合、発生主義では売掛金の発生時と支払いを受けた時に記帳しますが、現金主義では支払いを受けた時のみ記帳します。

現金主義の場合、単式簿記で済むので記帳の負担は少なくなりますが、青色申告でも10万円の控除しか受けることができません。

青色申告決算書を効率的に書く方法

青色申告決算書を一から作成しようと思うと、まず複式簿記の決算書から損益計算書と貸借対照表に転記します。

その後、各項目について内訳を書かなければならず、事業所用の決算書を作成する作業とは別の作業になります。

また、手書きの場合には合計等を計算しなければならず、記入ミスで決算書の数字が合わなくなることもあるため要注意です。

e-taxならば合計や転記は自動で行われますが、やはり帳簿から必要事項を転記しなければならず、確定申告の準備が負担になります。

そこで、会計ソフトを利用する場合には、青色申告決算書の作成にも連動しているものを選ぶのがおすすめです。確定申告関連は毎年のように内容が変更されるため、古いソフトを更新せずに使い続けることも避けた方がよいでしょう。

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