若者から生き方を学ぶ。実話を基にしたスケボー映画作品『LORDS OF DOGTOWN』

現実社会、人々は忙しく仕事・家事・人付き合い…様々なことに日々追われる。人生の中で、本当にやりたいことは何なのだろうか。誰のために、何のためにそれをやるのか。忘れていたあの頃の活気を思い出すことができ、またこれから社会に出ていく若者にも、何をして生きるべきかを考えさせてくれる一本。

サブカルチャーのひとつ、スケートボード

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渋谷と原宿の間にある宮下公園。JRに面したこの場所では、電車の音ともに日夜スケボーを練習する若者で溢れている。アメリカで流行ったスケートボードは、日本でも若者の心をつかみ、Pennyで表参道へと下るヒトもいるように原宿カルチャーの一つであるといえよう。
イカしたデッキに傷だらけの腕・脚、絶妙なバランスで技をキメる、そんな姿がカッコいいと憧れを抱いた人も少なくないのではないだろうか。

このような原宿カルチャーの原点、アメリカ・フロリダ州には誰もが憧れたスケーター達がいた。伝説のスケートボードチームZ-BOYSだ。サーフショップ「Zephyr」(ゼファー)で1974年に結成されたサーフチームから、スケートボードチームが分離してできた。彼らはスケボーブームの基盤を築き、火付け役となった。さらに、デッキやスニーカーなどスケボーに必要なグッズのブランド展開も、彼らの影響で流行した。

そんな、彼らの実話を基にした作品が『LORDS OF DOGTOWN』である。
努力、栄光、挫折、名誉、友情…誰もが経験する苦悩や喜びを通して、彼らが選んだ歩むべき道とは何かを教えてくれる作品である。

ロード・オブ・ドッグタウン コレクターズ・エディション [DVD]

あらすじ

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「LOCALS ONLY / よそ者お断り」の一文で始まる本作。

“DOGTOWN”とは貧しい町の意で、ベニスを示す。そこでサーフィンやスケボーに明け暮れる、ジェイ・トニー・ステイシーの三人。「ここはファミリーレストランだ!」と言いながら、喧嘩が始まる、そんな街で育った若者は野望と活気に満ち溢れていた。
ある時、DOGTOWNのリーダー的存在であるスキップによって、ジェイやトニーら近所の子供たちでスケボーチームが組まれる。彼らのチームは、小さな大会から徐々に出場しては優勝を飾り、自分たちのスタイルを作り上げていった。その首位争いは、ほとんどチーム内での戦いであるほど、彼らのレベルが高かった。しかし、大会での優勝を重ねて名の売れたメンバーが他チームから引き抜かれていく。

さらに、メンバー内でも恋人を巡って対立が起きるなどして、チームはバラバラになってしまうのであった。
チームを捨て、自分のスケボー技術に酔いしれ天狗になった者、ただひたすらに自分のやり方で自らのスケートスタイルを楽しむ者、それなりにいい生活をしてそれなりの富と名声を得た者…。
三人の友情は無くなり、悪しきライバルのような関係になってしまったかに思われた。だが、家族のようにいつも一緒にいたシドの病気や、それぞれの転機により、元の友情を取り戻し、空のプール‘ドッグ・ボウル’で再会を果たす。

LORDS OF DOGTOWN – Trailer

実在する名スケーター

・Tony Alva / トニー・アルヴァ(1957- )
初代の世界チャンピオン。ドッグ・ボウル創設のひとり。自身のブランド「Alva skateboards」を19歳で設立、経営。

・Stacy Peralta / ステイシー・ペラルタ(1957- )
1978年、パウエル・ぺラルタを興し、チーム「ボーンズ・ブリゲイド」を結成。ここから、トミー・ゲレロがうまれる。現在は映画監督やプロデューサーとして、映像制作でも活躍中。

・Jay Adams / ジェイ・アダムス(1961-2014)
幼い時から、サーフィンやスケボーをする。ジェイの死を伝える、Thrasherマガジンの記事内では「ジェイはスケートボードそのもので、最も純粋にスケートしていた」と語られている。昨年夏、心臓発作により他界。

出典:出典:http://news.nollieskateboarding.com/archives/217

何のために生きているか学べる作品

私たちは普段、やりたいことができているありがたみや、何のためにそれをやっているのかを考えないで生活していることが多い。自分の生きていく道として、何を軸に生きるのか、どこに重きをおくのか、彼らの生き方は、まさに現代社会にのまれている私たちに問いかけているのかもしれない。

本作は、ストーリーの主要人物であるステイシー・ペラルタが、脚本を手がけている。実にリアルなベニスの再現や、登場人物それぞれの描き方が忠実なのも見所だ。キャストのスケートボード指導にトニー・アルヴァが関わっていること、ゼファーのスキップをヒース・レジャーが演じていることも注意してみてみると、作品がより一層面白くなる。

ヴィンテージ要素の強い映像とスケボーを熟知したカメラワーク、制作チームのこだわりはDVD特典のメイキングに収録されているので、合わせて見ると良い。

また、ステイシー・ペラルタが監督、脚本を手がけた同ストーリーのドキュメンタリー版がある。そちらも必見。

『DOGTOWN &Z-BOYS』

自らのスタイルで、世界に価値を見出した彼らの生き方は、野望を忘れかけていた大人、これから社会を見ていく若者、どちらにも刺激となることだろう。最後に、この本を紹介する。

『LIFE SUCKS』


LIFE SUCKS 最低って言えるほど最高な人生を送るレジェンドたちの証言 (TWJ books)

出典:Amazon.co.jp / http://www.transworldjapan.co.jp/life_sucks/

Z-BOYSのようなスケーターを始め、様々なカルチャーでスタイルを築いた人物の生き方を知ることができる一冊。23人のオルタナティブなレジェンドが語る、最低だけど、最高な人生。彼らが、若いとき何をしていて、どんな壁に当たって、今どう生きているかが彼らの言葉でつづられており、これから未来を歩んでいく私たちに何かのヒントを与えてくれるかもしれない。

若くにして成功を収めたZ-BOYS。それが成功と言えるかどうかわからないが、彼らの生き方・人生は実りの多く充実した日々であったように感じ取れる。誰もが好きなことをして生きていける社会でない現代、どんなことをして生きてきたか、少し振り返るタイミングになることと願う。社会の見方や、人生の歩み方・価値観が変わるかもしれない。

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