【コラム】小さいこだわりのある書店が流行っている理由とその在り方 – 『GINZA』12月号発売記念イベントより

読者の皆さんは雑貨、ファッションと一緒に並ぶこだわり本屋さんが街に増えてきたと感じませんか。

東京・下北沢のビール&ブックという名のビールが本を読みながら探せる本屋『B&B』が、コンセプチュアルな書店として有名になり、様々なコンセプト小さな書店が街に増えている。今なぜそういった書店が増えていて、お客さんが来ているのかを考えてみたい。

まずはじめに

2014年11月12日発売『GINZA』12月号の特集は『本とコート』。
特集の一つにあったものを取り出し、2014年11月17日に行われた『小さくてもこだわりのある本屋さんの話』での一幕と、これまでの体験による整理が本稿である。

登壇者の一人である、『百年』という書店の樽本樹廣店長の『百年』の由来が非常に心に残ったのでご紹介したい。

人は、生と死がある。生まれてから、死ぬまではおおよそ100年(百年)。
人はその間に、出会いと別れを繰り返す。
本とも出会いと別れを繰り返して、色々な本に出会っていきたい。

そういう思いで付けられたようだ。

確かに私たちは、人や本との繋がりなしには生きてはいけないだろう。
『小さくてもこだわりのある本屋さんの話』を考える前に、
本(書籍や雑誌)と人との関わりを整理してみたい。

本との関わり方

まずは、本と人がどのように関わっているかを想像してみよう。

この世に生を受けて、死ぬまでのうちに書籍を見た事がない人は存在しない。

そんな奇特な人がいたら、一目お会いしてみたいものなのだけど、
私たちは絶対に本と関わって生きていくしかないのだ。

幼少期には、絵本との出会いが待っている。
とてもあたたかい物語や絵と一緒に言葉が添えられている。

小学生になると、書籍でいえば、教科書を手にして、
物語の深さや人の感情や考え方といった内面の部分まで知るようになってくるだろう。
また、早いませた子ならこの位の時期から雑誌を見始める。

街に出れば、〇〇書店や小さな古本屋、ブックオフなどのディスカウントストアなどと出会う。
しれっと入ってみて、店頭に並ぶ新書に目を向けたり、自分の欲しかった本を探しに中を見てみたり。

匂いや装丁に誘われて、ついつい目的のものと違うものを購入してしまったりして、新しい出会いがあったり。

Amazonやkindleといったインターネットを使った本の購入で、本との接点が増えていて、手に入れる方法や本を見る方法は多様化している。

そうやって、新しい人と出会うかのように新しい本と出会っていく。
むしろ、新しい人と出会う事でも新しい本と出会っていくのだ。

そういった上で、今、”本と人”、
そして本を置く場所との関わり方はどうなっているのか。

小さくてこだわりのある本屋の増加

出典:http://www.fashionsnap.com/

冒頭にも書いた通り下北沢にある本屋『B&B』は、新刊書籍を並べ、コンセプト系の書店の中でも広い売り場面積を誇り、さらにイベントを開催している。”人と本” を繋げる新しい書店だ。

新刊書籍というのは、粗利益が2割といわれていて、それだと人件費などを考慮すると書店を経営するのが難しい。
そういった書店経営の土壌を知っていたので、B&Bは元々、本だけの販売で経営をしていくということではなく、ドリンクやイベントでの収益というのを念頭に置いたコンセプト設計で始められたそうだ。

一方、今回登壇した方々は、古本をメインとして取り扱っていて、百年の樽本さんは7割が利益にならないと、バイトや社員さんの給料・他を賄うのは難しいという。
スノウショベリングの中村秀一氏は、グラフィックデザインをやりながら『箱』を作ろうとした。事業計画を立てる程の綿密ぶりで、 “本屋” というビジネスモデルとは全く異なると話す。

小さくてもこだわりのある本屋さんの話』に、登壇した中の2名のグラフィック・フリーランスでデザイナーをされている中野氏、中村氏は、本だけを販売するのではなく、『箱』として大きな枠組みで捉え、その中に服や、雑貨、音楽、本などを売り場に置いている。

視点を変えると、“カルチャー” を拡げていくということに力を注いでいるというのが印象的だ。

カルチャーを拡げていく、という事はある種『街を作る』ということだ。
どこにでもある変わりのあるお店じゃなく、
そのお店があるからという理由で、人が集まり、コミュニティを形成する。
コミュニティが出来る事によって、文化が出来る。

そういった一種の事例になっていっている、なっていくのではないか。

人が集まるような場所を作れたら、、なんて考えたら、
夢物語のようで、少しだけ高尚で、温かくて幸せな気持ちになれるのではないだろうか。

編集後記

『GINZA』12月号の特集の一部である『小さくてもこだわりのある本屋』から派生して、イベントが実現するという事も『GINZA』編集長の中島敏子氏は驚いていたが、その通りだ。

『GINZA』の “本とコート” という特集は、”小説に出てきそうなコート” などといった独特な切り口が非常にユニーク。興味のある方は、是非手にとって見てみていただきたい。

ファッションも本も愛しているという方は、
絶対に胸がドキドキする様な感覚を得られるのではないだろうか。

GINZA (ギンザ) 2014年 12月号

イベント出演者

樽本樹廣(百年)
高松徳雄(クラリスブックス)
中村秀一(スノウショベリング)
高橋和也(SUNNY BOY BOOKS)
鈴木健司(リズム&ブックス)
野崎雅彦(ロスパペロテス)
内沼晋太郎(B&B)
中野貴志(ノストスブックス)
中島敏子(GINZA編集長)

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